万葉集 〜時を越えて〜

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初句索引
かにかくに 人は言ふとも 若狭道(わかさぢ)
後瀬(のちせ)の山の 後(のち)も逢はむ君
みんな、あることないこと噂するけれど、
その噂がしずまった後にでも、また逢いましょう?
世の中し 苦しきものに ありけらし
恋にあへずて 死ぬべき思へば
恋って、生きて行く中で特に苦しいものかも。
あなたが恋しくて、苦しくて。
たえられなくて、もう死んでしまいそう……
後瀬山(のちせやま) 後(のち)も逢はむと 思へこそ
死ぬべきものを 今日までも生けれ
噂がしずまればまた逢えると思っているからこそ、
死にそうなほど苦しいのに今日まで生きてるんだよ、僕だって。
(こと)のみを 後(のち)も逢はむと ねもころに
我れを頼(たの)めて 逢はざらむかも
『後で逢おう』なんてキミは言うけど、
そんなの口だけで、ほんとは逢ってくれないんじゃないの?
 なんとも訳しにくい歌でした(汗) 前の二首を女性が贈り、それに応えて後の二首を男性が詠んだということになっています。このふたりの間ではこの前後にも多くの歌が交わされていますが、とりあえず今回は割愛というトコで。
 まず一首目。第三句と第四句は続く第五句の『後』を起こす序詞になっています。歌の内容は、訳したそのまんまですね。
 続いて二首目。こちらは恋の苦しさを詠んだ歌になっています。先の歌を受けて、後で逢おうとは言ってみたものの、逢えないのは辛いという気持ちが込められているのかもしれません。
 三首目。一首目、二首目を受けた歌ですね。素直に、今は苦しいけどいつか逢えるその日を心待ちにしている、という内容になっています。
 そして四首目。これがなんともフクザツな歌なんですよね……。一首目を受けて恋人に逢えない不安を詠んだ歌と取るのが普通かもしれませんが、ワタシが思うにこのふたり、周りの状況で今は逢えないだけで、もう充分らぶらぶなんですよね(笑) なので、ちょっとした悪戯で詠んだ歌なんじゃないかなぁ、なんて思ったりもするんです。だとしたら、相当心の通じ合ったカップルだと思います。こんなコト言われたら腹立ちますもんね、普通。
 ちなみに、この直後に出てくる歌を『夢で逢うと』で既に訳してあります。ワタシ的には、恋人に逢えない不安を詠んだ歌としては『夢で逢うと』の方が好きです。