万葉集 〜時を越えて〜

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初句索引
浅茅原(あさぢはら) 小野に標(しめ)(ゆ)ふ 空言(むなこと)
逢はむと聞こせ 恋のなぐさに
嘘でもいいの。
ただひとこと『逢おうよ』って、そう言って。
あなたを想う苦しさも、少しはまぎれるはずだから……
 さて、少々解説をば。上二句は続く『空言』を起こす序詞です。なぜ『空言』を起こすのかと言いますと、最初に出てくる『浅茅原』って言うのは丈の低い『ちがや』の生えた野原のことです。その『小野』に『標』を結うというのは、そこの占有を意味するのですが……。この『ちがや』っていうのは『かや』なんかに比べると利用価値の低い植物でしたので、そんなことをしても意味はないということで『空言』つまり『嘘』を起こすのだと、そういう説や、そもそも村落の『小野』は、個人の占有が許されなかったので、そんなことはできないから『空言』を起こすのだと、そういう説も。
 まぁ、そんなことよりも、歌の意味ですよね。嘘でもいいから優しい言葉をかけて欲しい。そんな想いがひしひしと伝わってきます。でも、実際にそんなことを言われてもただ虚しいだけかもしれません。人の想いってのは、なんともフクザツです。