万葉集 〜時を越えて〜

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初句索引
春過ぎて 夏来(きた)るらし 白栲(しろたへ)
(ころも)干したり 天(あめ)の香久山(かぐやま)
春も過ぎちゃって、いよいよ夏っ!
ほら、洗濯したての真っ白なシャツが風になびいてる!
 とっても有名な歌ですね。小倉百人一首にも
『春過ぎて 夏来にけらし 白妙の 衣干すてふ 天の香久山』
 というカタチで入っています。原歌を直訳すると、
『春が過ぎて夏が来たらしい。真っ白な衣の干してある天の香久山に』
 となります。そして小倉百人一首の方を直訳すると、
『春が過ぎて夏が来たらしい。(夏になると)真っ白な衣を干すという天の香久山に』
 となります。う〜〜ん、これじゃ違いがあまり分かりませんかね……
 文法的な解説は専門家に任せるとして、原歌の『夏来るらし』はいかにも『夏が来た!』って感じです。それに対して『夏来にけらし』は『夏が来たみたいですねぇ』という感じで、少し季節感がぼやけます。また、原歌の『衣干したり』はまさに衣の干してある風景を見ているようになるのですが、それに対して『衣干すてふ』では、訳にも書いたように『衣を干すという』となり、実際に見ている風景ではないように感じられてしまいます。
 万葉集にある原歌は夏が来たということを直接的に力強く表現し、それに対して小倉百人一首は優雅さを求めたという感じでしょうか。音も後者の方が優雅です。一概に『どちらが良い』とは決められませんが、ワタシは原歌の方が好きです。躍動感が伝わってきてイイカンジです。